シンポジウム
「災害復興と女性の自立」2011年度 公開講演会 RIWAC主催
- 日付:
- 2011年12月10日(土)
報告
2011年12月10日(土)に、現代女性キャリア研究所の公開講演会が開催されました。本年度のテーマは「災害復興と女性の自立」。この3月11日の東日本大震災によって、大きな被害を受けた被災地の女性たちに対し、雇用や経済的自立につながるような支援はどのように可能なのか、活発な議論が行われました。
岩手県のもりおか女性センター長・参画プランニング・いわて副理事長の田端八重子氏は、岩手の女性たちの現状と復興事業のひとつとして試みられている「デリバリーケア」プロジェクトについて、報告されました。この事業は、「芽でるカー」と名付けられた巡回車で仮設住宅を訪問し、買い物代行や高齢者らの安否確認などを行う支援サービスで、この担い手に現地の女性たちを雇用することで、就労の機会も提供する、というシステムです。これは、現在、3つの地域で試みられており、今後、サービスも(すなわち雇用機会も)拡大していく予定だそうです。
大学非常勤講師・東京大学社会科学研究所特任研究員の皆川満寿美氏は「防災・災害復興になぜ女性の参画が必要なのか―「災害・復興と男女共同参画6.11シンポ」の活動を通して」というテーマで、防災や復興に女性の視点が欠かせないことを、阪神・淡路大震災の例なども引用しながら、明快に主張されました。「災害は、弱いところに、より強い被害が現れる」という指摘に、改めて、弱い立場にいる者の側から、復興への要望や意見を出していくことが大切であると、再認識しました。
このお二方の報告を受け、立教大学大学院の庄司洋子氏は、「地域特性」と「女性の参画の必要性」という2点を、論点として挙げられました。復興とは、ただの現状復帰ではなく、新しい社会を創る機会、そのために、地域の特性に十分配慮しながら、女性が積極的にかかわる必要がある、と指摘されました。
当日は会場が、ほぼいっぱいとなるような盛況でしたが、フロアからも活発な質問や意見が出されました。現地の採用について「どのような基準で採用したのですか?」という質問に、田端さんが「夢を語ってもらった」と答えていたのは、大変印象的でした。「夢を語れる人」という採用基準は、「この就労機会を明日につなげてほしい」という採用する側の「願い」そのものではないでしょうか。アンケートに寄せられた感想のなかに、「芽でるカーの実践には「希望」があると思った」とありましたが、まさに、明日への希望がこめられた公開講演会となったと思います。