日本女子大学 現代女性キャリア研究所 RIWAC Research Institute for Women and Careers

イベント

報告シンポジウム報告「男性育休のいま」

日付:
2022年12月3日(土)

12月3日(土)に「男性育休のいま―育休制度30年を迎えて」と題する、シンポジウムを開催いたしました。オンライン参加を含め、100名を超える参加者を迎え、盛大な会となりました。
第一部の講演では、法政大学教授で当研究所特任研究員の武石恵美子先生をお招きし、「男性育休:求められる背景と課題」というテーマの下、日本の現在の育休制度の状況についてご講演いただきました。

まず、育児・介護休業法の変遷と主な内容について説明され、これまでの法改正の2つの流れである①女性の就業継続支援=制度の充実化と②男性の育児への関与を高める=男性を意識した制度化のバランスをとることが必要であると強調されました。

今回の2022年改正法では、男性の育児が進まないことへの危機感から制度の利用を望む人が育休を取れるように、「産後パパ育休」の創設、育休の分割取得などを制定しています。しかし、男性の育児休業取得は男性の育児参加の一部にすぎず、男性のトータルな子育てへの参加が重要であることを確認されました。

次に、大阪大学教授高橋美恵子先生からは「男性育休先進国スウェーデンの実践的な取り組み」というテーマで、スウェーデンの現状とその課題について最新の研究結果からご報告をいただきました。

スウェーデンでは、1970年代に共働き社会への転換が図られ、各国に先駆けて男女の育児参加を進める制度や環境の整備が進められてきました。それによって、男性の約9割は育児休業を取得するようになり、労働時間の男女間の差も相対的に少なくなりました。スウェーデンで男性育休の進む様子が、豊富な統計データと先生が実施されたインタビュー調査の結果を通じて説明されるとともに、今後の課題として、共働きが進むなか男女が育児休業を均等に分割することの重要性が指摘されました。

第二部では、まず事例報告として、キリンホールディングス株式会社豊福美咲氏から「より誰もが働きやすい環境をつくる「なりキリン」ママ・パパ研修」などのご紹介をいただき、清水建設株式会社西岡真帆氏からは「清水建設における男性育休取得推進への挑戦」というタイトルで社内での男性育休取得推進への道のりを詳細にご報告いただきました。

キリンホールディングス株式会社では、時間制約のある働き方などを模擬体験して業務の両立を図る研修を2019年より全社で展開しています。このユニークな研修は、従業員の働き方と上司のマネジメント力向上など個人と組織に成果を出しているそうです。一方、清水建設株式会社では、男性の育休取得を促すために社長が自ら男性従業員にレターを出したことが契機となり、その後は男性版産休(パタニティ休業制度)も導入しています。様々な取り組みにより、男性が多い建設業においても職場の理解が進み意識の醸成が図られています。

さらに、武石恵美子先生がコーディネーターとして、上記登壇者との活発なパネルディスカッションを行いました。さらに、フロアからの質問でより有益な情報交換の場になりました。

今回のシンポジウムでは、日本とスウェーデンの現状と課題に加え、実際企業ではどのような課題をどのように解決し、男性育休取得を推進してきたのかを考える貴重な時間となりました。

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