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シンポジウム報告「非婚・少子社会への視座-若者の意識・家族政策の変化と少子化の現状-」
- 日付:
- 2024年12月14日(土)
12月14日(土)に「非婚・少子社会への視座―若者の意識・家族政策の変化と少子化の現状―」と題するシンポジウムを開催いたしました。オンライン参加を含め、全国から150名を超える参加者を迎え、盛大な会となりました。
第一部では、ニッセイ基礎研究所上席研究員の金明中先生、日本女子大学人間社会学部教授の林浩康先生、武蔵大学社会学部教授の千田有紀先生をお招きし、3名の先生方にそれぞれご講演いただきました。
金明中先生には「日韓における少子化の現状と対策の比較:なぜ日本の出生率は韓国を上回っているのか」というテーマでご講演いただきました。
日本と韓国における少子化の現状や原因について、「なぜ日本の出生率が韓国を上回っているのか」という視点から、両国の共通点と相違点をご説明いただきました。現在日本の出生率は1.20、韓国の出生率は0.72と数値の違いはあるものの、両国の少子化の原因に大きな違いはなく、初婚年齢や大卒就職率の高低などがその差を生んでいるのではないかと論じられました。また金先生は、少子化の原因が類似していることから、日韓それぞれが互いの少子化対策を参考にする必要があるとまとめられました。
林浩康先生には「養育における家庭・地域の位置付けと児童福祉施策への影響~高度経済成長期以降の福祉政策の動向を踏まえて~」というテーマでご講演をいただきました。
林先生はまず「児童福祉政策における家庭の位置付けと施策への影響」の観点から、家庭の概念の変容や、養育と家庭・地域(社会)の位置付けの変化について論じられました。また、高度経済成長期以降の政策動向として、家庭責任への偏重、家庭への支援の変遷や支援を取り巻く社会の変容をご説明になりました。最後に問題提起として、これまでの家庭に偏重した養育観が子どもへの直接的な支援の不足や支援への利用抑制に繋がっているのではないかと述べられました。
千田有紀先生には「若者の結婚観・恋愛観の変容「愛情」と「合理性」との狭間で」というテーマでご講演をいただきました。
結婚を取り巻くこれまでの社会や認識の変化について述べられ、結婚すること、結婚する意向があることが当たり前とされてきた社会において異を唱えた酒井順子『負け犬の遠吠え』や上野千鶴子『おひとりさまの老後』など、結婚にまつわる代表的な書籍が紹介されました。その後「大学生の恋愛と友情にかんする意識調査(2017年~2019年)」の結果を用いて、結婚しなくてもよいという若者たちの意向について、人間関係に関する規範や親密性の変容という点から問題提起がなされました。
第二部では、ご講演くださった3名の先生方と、日本女子大学現代女性キャリア研究所所長の永井暁子先生による全体討論と質疑応答が行われました。
フロアとオンラインから集まったご質問に対する各先生のご意見をいただきながら議論を深め、活発なパネルディスカッションを行いました。今回のシンポジウムでは、「日本における非婚や少子社会」について、制度や社会背景について歴史的変遷を再考するとともに、現在の人々の意識の変化を考える大変貴重な時間となりました。