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2025年度シンポジウム開催の報告
- 日付:
- 2025年12月20日(土)
12月20日(土)に「女性の「働く」を考えるー生活基盤としての仕事を支えるためにー」と題するシンポジウムを開催いたしました。対面での参加に加え、オンライン参加では国内のみならず海外からもご参加いただき、大きな注目を集めました。
今シンポジウムでは、女性の経済的な困難について、歴史的視点、政策的視点から再検討し、今後の政策提言につなげることを目指しました。「貧困の女性化」と言われて久しく、男女雇用機会均等法から40年、女性活躍推進法から10年たった今でも、多くの女性が経済的な苦境に立たされています。女性と子どもの貧困は、女性が労働市場において低い位置に置かれていることが原因であることは明らかです。これまでの度重なる法改正にもかかわらず、「女性はなぜ仕事を掴み取れない、掴み取ろうとしないのか。どうすれば生活基盤としての仕事を維持できるのか」を考えました。
日本女子大学副学長の坂本清恵先生に開会のご挨拶をいただいた後、現代女性キャリア研究所所長の永井暁子先生より趣旨説明がありました。そこでは、家族の変化を確認した上で貧困率や女性が稼ぐことの難しさなどの問題点を指摘し、女性が希望するライフコースや男性が将来のパートナーに希望する働き方の推移など昨今の世論の変化が解説されました。
第一部では、日本女子大学人間社会学部社会福祉学科の中尾友紀先生、日本女子大学家政学部家政経済学科の中山真緒先生、日本女子大学人間社会学部現代社会学科の周燕飛先生にご登壇いただき、それぞれご講演くださいました。
中尾友紀先生には「女性の老後生活は誰が保障するのか」というテーマでご講演いただきました。
はじめに、公的年金の基礎知識について解説いただいた後、「厚生年金保険の脱退手当金」「厚生年金保険の遺族年金」「国民年金の第3号被保険者」という3つの仕組みが創設・改正された経緯を確認し、各仕組みが女性の老齢リスクをどのように議論したのか、結果として女性の老齢リスクはどのように保障されることになったのかが考察されました。これらを通して、「女性の老後生活は誰が保障するのか」が検討されました。
中山真緒先生には「母親の就業と保育サービス」というテーマでご講演をいただきました。
最初に、なぜ“保育”が女性のキャリアの鍵になるのかという事について、共働き家庭の増加や出産後の働き方の変化、認可保育所と待機児童の数の変化などから、現状の解説をいただきました。その後、大阪府における母親の就業と認可外保育所・保育サービスに関する研究「The impact of childcare on maternal employment」とその結果をふまえて、母親の就業と保育サービスの関係性についてまとめられました。
周燕飛先生には「公的職業訓練とシングルマザーの所得変化」について、高等職業訓練促進給付金事業に注目してご講演をいただきました。
まず、背景にある働いても貧困という現状、そして公的職業訓練事業に期待される中での高等職業訓練促進給付金事業について解説いただきました。この訓練受講によって様々な資格が取得されているものの、事業効果の評価は充分に明らかではないという点が指摘されました。そこで、政策効果を過大に評価するバイアスが生じにくいように、属性の違いと内生性の問題を制御しながら、訓練受講者の稼働所得が非受講者より優位にあるかどうかを調査した先生の研究結果から、求められる対策が提起されました。
第二部では、ご登壇くださった3名の先生方と、日本女子大学現代女性キャリア研究所所長の永井暁子先生による全体討論と質疑応答が行われました。
フロアとオンラインから集まったご質問に対する各先生のご意見をいただきながら議論を深め、活発なパネルディスカッションを行いました。今回のシンポジウムでは、「女性の『働く』を考える―生活基盤としての仕事を支えるために―」と題し、制度や社会背景について歴史的変遷を再考するとともに、現在の政策の在り方や今後の政策提言の方向性を考える大変貴重な時間となりました。