日本女子大学 現代女性キャリア研究所 RIWAC Research Institute for Women and Careers

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報告シンポジウム報告「女性が働く意味を問う」

日付:
2023年12月2日(土)

12月2日(土)に「女性が働く意味を問う」と題するシンポジウムを開催いたしました。オンライン参加を含め、全国から100名を超える参加者を迎え、盛大な会となりました。

第一部では、一橋大学名誉教授の木本喜美子先生をお招きし、「女性が働く意味を問うー共働き文化の過去・現在・未来?」というテーマで基調講演をいただきました。

まず、女性が働く意味という問いについて、様々な先行研究を検討することで、シンポジウムの命題を明確化されました。次に、日本的雇用慣行の形成と揺らぎに着目されました。そこでは、「女性が働く意味」を考えるにあたり、戦後日本の男女の働き方・生き方を枠づけてきた日本的雇用慣行の仕組みをおさえつつ、非正規化と共働き化によって揺らぎが生じている現在の局面を概観しました。また、日本の労働環境における、賃金水準・管理職比率・勤続年数をめぐる様々な男女間格差の現状も確認しました。

これらを踏まえて、「女性が働くこと」をいかに捉えるかということに論を進め、「女性が働くこと」を把握し位置づける際に、「近代家族論」の普及がもたらした問題点を取り上げました。そして、女性労働の軽視/捨象傾向に対して、共働きの水脈を掘り起こす研究の重要性を提起しました。

最後に、女性が働く意味を二つの調査事例を含めて改めて検討しました。地方圏での調査事例(調査対象者は80歳代後半および40歳の女性)を挙げながら、この二つの事例において働くことがどのように意味づけられてきたのか、その必要性がどこから生じたのかを考察しました。そこから、現代から近未来に向けた女性が働く意味について考えるヒントを得ることができました。

第二部では、パネルディスカッションとして、埼玉学園大学教授の杉浦浩美先生、日本女子大学教授の永井暁子先生、名古屋大学准教授の上村泰裕先生から、基調講演を踏まえた上でのご講演をそれぞれいただきました。

杉浦浩美先生は、「なぜ女性の就労は〈選択〉の問題とされてきたのか」と題し、近代家族論の側から、女性が働く意味を問われ続けてきたことを改めて整理されました。女性が、就労=経済的自立というシンプルな就労観から遠ざけられ、それが現在の女性労働者の困難にもつながっているのではないか、という問題意識の下、現在に至る女性の「就労観」と政策の関係について論じられました。

永井暁子先生は、「家計と夫婦関係から見た女性が働く意味」と題し、女性の就業を含めライフコースの変化が起きている中で、女性が働くことは「家計の補助」から変化しているのだろうかということについて、「家計」の視点から女性が働くことについて考えました。

上村泰裕先生は、「働くことの意味と保護」と題して、ディーセントワークに着目し、はたらく意味と保護というふたつの軸から様々な働き方を検討しました。

最後に、フロアからの質問に対する各先生のご意見をいただきながら議論を深め、活発なパネルディスカッションを行いました。今回のシンポジウムでは、「女性が働く意味」について、日本の就労環境を再考するとともに、未来の在りようを考える貴重な時間となりました。

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