イベント
「女性のキャリア形成に大学は何ができるのか?」RIWAC主催 2015年度シンポジウム
- 日付:
- 2015年12月12日(土)
- 時間:
- 13:00~17:00
- 場所:
- 日本女子大学新泉山館
第1部では、RIWACがこの5年間取り組んできた「女性のキャリア支援と大学の役割についての総合的研究」(文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 2011~2015年)の成果報告をおこないました。この研究事業の柱となっている二つのテーマについて、それぞれ研究の流れと成果が示されました。
テーマ1「女性とキャリアに関わる戦後社会調査の再分析と女性調査アーカイブの公開運用」では、当研究所の女性調査アーカイブの運用報告および、所蔵する約1500件のデータから教育分野と家族分野を中心に分析した結果が報告され、社会調査が社会の情勢や関心を反映していることが示されました。
テーマ2「大学における女性の再就職支援プログラムの開発研究」では、プログラム開発のために実施した「女性とキャリアに関する調査」結果、および女性の再就職支援プログラム開発・実施結果が報告されました。調査によって、高学歴女性の就業実態が詳細に把握され、これによって、これまでの女性就業支援が一面的であった可能性が明らかになったこと、合同会社西友の協力を得て新たに開発した女性の再就職支援プログラムでは、再就職に際して大学に期待される役割が明確化されたことが示されました。
この後に、大沢所長より総括として、従来考えられてきた女性のキャリア形成支援の幅を広げる必要があること、大卒女性が活躍できるための公的支援は乏しいため大学が教育面で関わる必要があること、今後は企業側の採用ニーズと女性側の就業ニーズをマッチさせるシステムの構築が望まれることが示され、何度でも再チャレンジできるセカンドチャンス社会を作り上げていくことが、社会全体を活性化するカギであることが述べられました。外部評価委員の大野曜先生、大槻奈巳先生より、本事業の運営および成果についてご講評をいただきました。
第2部では、ハーバード大学社会学部長兼ライシャワー日本研究所教授メアリー・ブリントン先生をお招きし、「セカンドチャンス社会構築に向けて」と題してご講演をいただきました。日本の企業では同じ会社に長く勤めることが一般的ですが、アメリカに比べて企業間移動すなわち転職が極めて少なく、それが労働者の会社に対する交渉力を限定していることが指摘されました。もし、他社に移動できる可能性が高ければ、労働者は自分の仕事の条件や内容について会社の都合を優先させる必要がなくなってきます。したがって、終身雇用的な価値から転職の価値への転換が必要です。そのためには、労働者個人は、ポータブルな能力を身に付けることが重要になってきます。そのための教育が重要になってくることが指摘されました。
大変刺激的なお話しをうかがい、それでは日本の大学は具体的にどのような教育を提供できるのかなどフロアを巻き込んだ質問や意見が活発に交わされ、実り多いシンポジウムとなりました。
このシンポジウムの記録は、2016年度の当研究所の紀要『現代女性とキャリア』第8号に掲載する予定です。